計測技術の開発
河川における計測技術の高度化を図る上で、ICTの活用は必要不可欠と言えます。システム開発の知識と経験を活かし、解析ツール・計測ツールの自社開発を行い、最適なソリューションを提供できるよう、日々取り組んでいます。
PIVによる階段式魚道の解析の様子
PIV解析システム
PIVとは粒子画像流速測定法(Particle Image Velocimetry)の略称であり、ビデオ映像を解析して水面上の流況(流速・流向)解析を行う測定方法です。
独自開発したPIV解析アルゴリズムを用いて、国内最大の実験施設である千代田実験水路での破堤実験をはじめとした、多数の解析実績があります。
PIV解析は映像を基に解析を行うため、以下の利点があります。
- 通常では観測が困難な複雑形状の構造物内部やその周辺の流況を解析できる
- 点、線ではなく、平面的に各箇所の流況を得ることができる
- 直接観測が危険な箇所や洪水等についても安全に解析を行うことができる
モバイルマッピング(Android用電子野帳)
モバイルマッピングはGPS機能を利用して地図上に現在位置を表示しつつ、情報・写真などを登録して現地調査を行うシステムです。背景図を登録することができ、航空写真や管理基平面図など状況に応じて切り替えながら表示することができます。
本システムで調査を行うことで情報が蓄積され、登録した情報は地図上に表示され、タップすることでいつでも登録情報を表示することができます。
植被率分析ツール
「植被率」とは、一定の面積の内、植物が覆っている割合を示した数値です。
植被率は目視で調査することが一般的ですが、目視は簡便である一方、観測者の熟練度によって、人的誤差が発生し易い測定方法と言われています。
- 植被率分析ツールは、デジタル画像から植被率を算出するツールです
- 熟練者でなくても、デジカメ等でデジタル画像を撮るだけで「人的誤差なく」、「即座に」、「定量的な」結果が得られます
- 解析結果も保存できるため、算出根拠も視覚的に説明出来ます
種子カウンター
発芽実験等に有効な種子の個数カウント・サイズ計測をサポートするツールです。実験計数から成果作成までを省力化します。
湖沼のアオコ青潮調査システム
湖沼におけるアオコ・青潮発生状況を、気温・水温とともに記録します。
AIへの取り組み
近年、第3次AIブームと称され、AIに対する社会的関心が高まっています。
当社でも数年前から取り組みを始めております。
河川整備の基礎資料として用いられる河床材料調査では試料としての現地採取量140kg、持ち帰り量は35kgにも及ぶ河床材料の採取を必要としており、非常に労力を要するものとなっております。
このため当社では河床材料調査の効率化・省力化を目的として、画像による粒径の自動認識に取り組んでおります。
また、生物分類同定技術の向上、生物環境調査業務の効率化・省力化、他社との差別化を目的としてAIによる生物の自動認識について室蘭工業大学との共同研究を行っております。
その他にもAIを利用した様々な業務への活用に積極的に取り組んでおります。
GPS浮子
水災害の防災・減災のための基礎データとして、河川の流量の正確な把握が重要です。通常、出水時の流量観測では「浮子(ふし)」と呼ばれる棒状の浮きを投下し、その移動速度を計測します。
しかし、出水時の大河川における観測では、浮子が見えづらい・観測技術者が多く必要になるといった点が課題になっています。また、近年は画像処理型測定法による流速把握も進められていますが、停電等によりCCTVカメラ等が利用できないケースを想定した別手法の観測も必要とされています。
このため、当社ではGPSを内蔵した浮子(GPS浮子)の研究を進めています。
GPS浮子を利用することで、観測技術者の省力化や安全性の向上・観測時間の短縮・流下軌跡の記録による流速の精度向上効果が期待できるものとして、日々、研究開発に取り組んでおります。
ICTの活用で河川調査を変革します
近年、PCの処理能力の向上、デジタルビデオの高画質化などを背景に、画像解析技術が目覚ましい発展を遂げています。
弊社では2006年に河川向けPIVの自社開発を開始し、その後改良を行いながら、千代田実験水路における破堤実験解析などで実績を重ねています。
PIV技術により、従来は困難だった広範囲の流況解析が可能になりました。また、安全性の向上や省力化にも大きな効果を発揮しています。
今後も最先端ICTを活用する河川の計測・調査技術の開発等に積極的に取り組みます。