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土木学会北海道支部奨励賞

論  文  名 : 北海道における降雨災害の気象要因と地域発生頻度(論文報告集71 号 B-09)
受賞者名 : 長岡 宏樹(共著者:長谷川 和義)

(選考理由)
著者らは,近年における北海道の雨や雪の降り方,ならびに災害の程度や頻度の変化に着目し,なるべく多くの場所の長期間にわたる降水データや河川流量データ,および災害データを収集し,何らかの統計解析法を適用して信頼度のもとで判断を下すべきと考えた.

そこで,北海道の降雨統計に関する既往研究成果や河川流量等の観測データ,並びに気象災害データベースを用い,近年の気象特性の変化について解析を試みた結果,近年の降雨量・河川流量が北海道中央分水嶺に沿う形で,西部では低下,東部では増加傾向にある事を明らかにし,北海道の気候がこのような地形的な影響を受けて変化してきていることを確認している.
本論文では,これらの研究に続き,北海道における降雨を伴った災害(以下,降雨災害)の発生状況に的を絞り,1971 年から2009 年までの39 年間分のデータを整理し,その地域的・経年的特徴や地形区分との関係が見られるかを解析している.
その結果,著者らは,「北海道に降雨災害をもたらす最大の気象要因は台風であり,その影響が近年増大している反面,日本海低気圧による災害は大きく減少している等,降雨災害の気象要因が変化してきている事」,「降雨災害の地域分布では北海道南部が最も多い事」,「北海道中央分水嶺に沿う形で,北海道を西部地域と東部・南部地域に分割し,両地域の降雨災害の発生状況を整理したところ,降雨災害の発生件数には経年的に増加傾向が見られ,近年,東部・南部地域で多くなるように推移してきている事」を明らかにしている.
これらの知見は,今後の河川災害対策において,管理者の有効な指針策定に資するものであるほか,多くの住民に降雨(降雪)に対する心の備えをもたらす上で有用と考えられるため,土木学会北海道支部奨励賞に値するものと認められる.
よって,標記の論文を土木学会北海道支部奨励賞として選考するものである.

H26土木学会北海道支部奨励賞 賞状IMG_1622